たくさんの人がいるとパニックになってしまう子どもたちへ
聴覚過敏の理解と支援のヒント
「買い物に行くと突然泣き出す」「授業参観の日は落ち着きがなくなる」「人混みで抱っこから降りられない」——
これは、どれも当スタジオに寄せられる保護者のリアルな声です。
それらに共通して見られるのが、「聴覚過敏(ちょうかくかびん)」という感覚の特性です。
本記事では、理学療法士の視点から、なぜ子どもが人の多い場でパニックになるのか?を解説しながら、家庭でできる感覚統合の工夫や実際の支援例も交えてご紹介します。

聴覚過敏とは?その正体と子どもの困りごと
「聴覚過敏」とは、音に対して“敏感すぎる”状態のこと。音量の大小だけではなく、「種類」「高低」「重なり方」によっても影響を受けます。
具体的な困りごとの例:
- 子どもがざわざわした場所で急に不機嫌になる
- 話しかけると「うるさい!」と怒る
- 掃除機やチャイムなどの音でパニックになる
本人にとっては、「爆音の中に一人放り込まれたような状態」かもしれません。
しかし、周囲の大人には見えにくいため、「わがまま」「気分屋」など誤解されやすいのです。
なぜ人が多いとパニックになるの?
人が集まる場所では、以下のように多くの“音の種類”が一気に耳に入ってきます。
- 会話の声(さまざまなトーン)
- 笑い声や怒鳴り声
- 物のぶつかる音や足音
- 空調やBGM、アナウンス
聴覚過敏の子どもにとっては、「必要な音」と「そうでない音」の区別がつけにくく、すべてが等しく耳に飛び込んできてしまうのです。
その結果…
- 頭の中が音でいっぱいになり、パニック状態に
- 周囲を見渡せなくなり、恐怖や混乱を感じる
- 自分を守ろうと、走り出す・叫ぶ・泣く
これは「感情の問題」ではなく、「感覚の処理能力」の問題です。

家庭でできる感覚統合アプローチ
子どもが“感覚に振り回されずに自分を保てる”ようにするには、感覚統合の働きを高めていくことがポイントです。
ここでは、家庭でできる簡単な取り組みを紹介します。
1. 音を予測できる環境をつくる
「今から〇〇の音がするよ」と伝えることで、脳の準備が整います。
2. ノイズキャンセリングイヤーマフや耳栓の活用
過敏な子にとっては“安心毛布”のような存在。本人の希望に合わせて導入を。
3. 静かな遊び × 感覚刺激の組み合わせ
例:
- タオルに包まって揺れる
- 抱っこで“グーッと”全身を押す
- 毛布ブランコで左右にゆらゆら
前庭覚や固有受容覚を適切に刺激することで、聴覚の過敏さを和らげる効果が期待できます。
現場での支援例:聴覚と“見る力”の意外な関係
スタジオでは、聴覚過敏のある子どもに対して、視覚や身体感覚との統合をサポートする支援を行っています。
たとえば、
ケース:
5歳・男の子。人混みで泣き叫び、外出ができない。耳栓も嫌がる。
アプローチ:
- はじめは静かな空間で、目で追う“ビジョントレーニング”
- 並行して、トンネルくぐり・クマ歩きなど前庭感覚の遊び
- スタジオ内で「少しざわざわする状況」を段階的に体験
結果:
2ヶ月後には、室内のBGMに対して落ち着いて対応できるように。
「音が気になっても、自分で落ち着く方法を選べる」ようになりました。

保護者の声とビフォーアフター
「以前はスーパーのレジに並ぶだけで泣き出していました。今では“音が気になる”と教えてくれるようになりました。」
「人が多いと無理、と思っていました。でも、“どうしたら落ち着けるか”を一緒に考えてもらえて希望が見えました。」
小さな成功体験の積み重ねが、子どもの“感覚に対する自信”につながっていきます。
理学療法士×看護師だからできる、安心の支援スタイル
私たち「どれみのびじょん」は、理学療法士と看護師の夫婦で支えるスタジオです。
- 理学療法士として、身体や感覚の統合を専門的に支援
- 看護師として、心と健康面への寄り添いも重視
医療と発達支援の両面から、「どう育てばこの子らしい未来になるか」を常に考えながら、保護者と一緒に歩んでいます。

まとめ:パニックではなく“感覚の限界”を見てあげてください
「たくさんの人がいるとパニックになる」
それは、感情ではなく“感覚の限界”に達してしまったサインかもしれません。
ぜひ「落ち着ける環境づくり」と「感覚を整えるアプローチ」を日々の中に取り入れてみてください。
そして、困ったときにはいつでも相談してくださいね。
お子さんの“音の世界”が少しずつ穏やかになるよう、私たちも一緒に支えます。
どれみのびじょん
横浜市鶴見区・ビジョントレーニングと感覚統合の専門スタジオ
理学療法士と看護師が丁寧にお子さんと向き合います

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